Ubuntuのススメ

投稿者: | 2013年12月10日

メインのデスクトップPCを新調(自作)してから半年近く経ってしまいましたが、同時に初めて導入したLinux OS:Ubuntuも快適に使っています。もし、Ubuntuでどうしても問題があればWindows8を導入するつもりでしたが、今はもうそんな事すっかり忘れてしまいました。

そこで今回は、Ubuntu(Linux)に興味がある人向けに、感想や機能紹介を書いてみたいと思います。

Ubuntuとは何か

初心者の僕が誤解を恐れずに言えば、Linuxベースのデスクトップ用OSの中で最もポピュラー且つ、多分最も高機能なディストリビューション(インストールしてそのまま使えるカーネルと周辺ソフトのセット)です。

もっと簡単に言えば、WindowsやMacOSの代わりになる無料のOSを探しているなら、取り敢えずこれにしとけば間違いないでしょう。操作感もWindowsやMacによく似ており、コマンドを入力しないと使えないなんて事はありませんから^^;

デフォルトのデスクトップは、メーラーやブラウザと言った般的なソフトがランチャーとして画面左端に並んでいます(右図)。僕はWindowsでもそういう使い方をしていたのでそのまま使っていますが、Ubuntuはデスクトップのメニュー構造を変えられる機能が有り、Windows風にプルダウンの階層型メニューにすることも出来ます。

Ubuntuのメリットとデメリット

いきなり詳細に入ってしまいましたが、ここでUbuntuの(主にWindowsに対する)一般的なメリットについて列挙したいと思います。

  • OS自体完全無料である。勿論、どんなメジャーアップデートも無料。
  • Ubuntu上で動くアプリも基本は無料、もしくは少額の寄付で使える。しかも驚きの高機能なものも多い。
  • WordやExelと言ったMS Officeにソックリなソフトもプリインストールされている。しかも、ファイルの互換性がある。
  • Windows8のように要らないプリインストールソフトがベタベタ張ってあり、しかも消せないなんてことはない。
  • システムフォントとはWindows違って美しい(Macに近い)。
  • マシンにあまり高いスペックを要求しない。現行バージョンで多分WindowsXPと同等のマシン負荷だと思う(後述)
  • コンピュータウイルスが非常に少ない。理由はユーザーの絶対数が少ない事と、カーネルレベルで頻繁に更新されるため、ウイルス制作者にとってはコスト対効果が非常に低いから。
  • デフラグの必要がない(ファイルシステムが違うらしい)

一方、デメリットはというと:

  • メーカーサポート的なものは無いので、問題は全てネットで調べて自己解決しなければならない。しかも極一般的な事なら日本語コミュニティーで事足りるが、ちょっとマニアックな話になると、殆どは英語のドキュメントに頼らざるを得ない。
  • OSの更新頻度が非常に高いため、情報が古くて使えない事も多い。勿論、問題が解決されてその情報が必要ない場合もあるが、逆に新たな問題が発生することも。
  • 著名な有料ソフトの多くは、Linuxをサポートしていないので使えない。
  • 意外なことに、PicasaやSketchUP(後述)と言ったGoogle系のソフトがLinuxをサポートしていない。
  • これはUbuntuのせいではないが、巷で売っているほぼ全てのパソコンはOSがプリインストールされている。よってOSの強制購入を逃れるためには、パーツから自作するかBTOショップで偶に売ってるOS無しの完成品を選ぶしか無い。

デメリットの方はオープンソース特有の問題で、致し方ないと思いますが、それを補って余りあるメリットがUbuntuにはあります。OS及びアプリの更新速度の速さ≒高機能ぶりは僕の想像を超えていました。やっぱり自由って素晴らしい!

動作環境とパフォーマンス

Ubuntuは基本的にWindowsパソコンなら使えます。では動作の軽さ/重さについてはどうかというと、Ubuntuもヴァージョンが進む度に高機能化しており、以前から言われているようにWindowsより軽いかどうかは判りません。

僕の以前のパソコン(Pentium D805 3GB RAM)にその時点で最新のUbuntu13.04を入れて、元々入っていたWindowsXPと比較してみたところ、ほぼ同等のパフォーマンスでした。OSの起動時間も、Webブラウジングの動作速度も体感上はほぼ同じ。

つまり、WindowsXPがストレス無く動作していたPCなら、現行Ubuntu(13.04〜13.10)も問題なく使えると思います。なので、XPから何に乗り換えようか悩んでいるXP難民にもオススメです(^^)

では、XPの動作も重くなったようなPCはホープレスか?・・・というとそうとも限らないようです。Ubuntuより更に軽いディストリビューションも色々とあるようです(例えばPuppy Linuxは壊れて長年放置していたノートPCでも快適に動くそうです)。

周辺機器の対応状況

僕がWindowsからUbuntuに乗り換えるにあたり、最も懸念したのは周辺機器の対応状況です。ハードウェアメーカーはWindowsやMAC用のドライバは出していますが、Linux用ドライバなんてかなりマニアックな製品以外にはありませんから。

となると、Linuxの開発者達が個々の機器に対応するドライバを作るしかないのですが、結論から言うと僕の想像の遥か上を行く素晴らしい対応ぶりでした。個々の機器について下に列挙します。

プリンタ

HPのDescJet930Cという10年くらい前に買った機種ですが、最初から自動認識(機種も含め)していました。テスト印刷したら全く正常。微調整も全くせずにそのまま使えています。

ペンタブレット

WacomのCTE-650というペンタブレットをマウス替わりに使っていますが、これもUbuntuがWacomタブレットとして自動認識していました。しかも、セッティング用のソフトまで標準装備されています。

ただし、ペンは問題なく使えますが、付属のマウスが使えない(カーソルは動くけどクリックできない)という不具合が有ります。Ubuntu本家のフォーラムによると、以前のドライバ(恐らくUbuntu12くらいまでに付いていた物)では問題なかったが、最新のドライバで問題が起き、未だに解決策はないようです。

WEBカメラ

Logicoolの目玉親父みたいなWebカムを使っていますが、これも自動認識しました。Logicoolが出してる撮影ソフトはWinかMac用なので使えませんが、代わりにCheeseという同種のソフトがUbuntuで使えます。

ただこのソフト、最初は良かったのですが、多分OSのアップデートなどしているうちに、録画機能が使えなくなってしまいました。なので今は別の動画編集ソフトで代用しています。もっとも、Webカメラで動画撮影の必要性は僕もまだなく、Skypeなどでビデオチャットをしたい場合はそれだけで出来るはずです。

オーディオインターフェイス

M-AudioのDelta44というPCIポートのレガシーな製品ですが、バッチリサポートしていました(そうなることに掛けてPCIポート付きのマザーボードを買ったんですが)。Ubuntuに標準装備されるASLAというオーディオ関連ドライバ群が、おびただしい数の製品をサポートしています。と言っても、ブランドや商品名が違っても、ドライバは共通だったりしますが。

MIDIインターフェイス

O/I以上に驚きなのが、EmagicのMT4という超マイナーな機器に対応してたことです。Emagicは元々Logicという3大DAWの一つを作っていた会社ですが、10年以上前にAppleに買収され、ドライバどころか公式サイトすらもうありません。

にもかかわらず、Ubuntuはちゃんとサポートしていました。やはりALSAがドライバを持っていて、機種名を含めて自動認識し、何の設定もなく使えました。もうUbuntuはWindowsやMacが見捨てた古いディバイスの駆け込み寺じゃないかと思えるほどです。

アプリケーションソフト

アプリに関してはWindows時代の遺産(少ないけど、4-5万円するアプリを持っていた)を諦めざるを得ません。僕の場合、Webや音楽制作用のアプリが必要で、従来のものに代わるソフトがあるかどうかが懸念材料でしたが、結論から言うと全く問題ありませんでした。

画像・音楽・ウェブ開発と言った、「クリエイティブ系」のソフトについて個別に挙げていきます。

Webオーサリングソフト

Web制作用には、これまで業界定番のDreamWeaver(DW)を使っていましたが、Linux版はありません。色々探したのですが、結局Linux用で多分最もポピュラーなAptana Studioというソフトを使っています。

これはWindows版もあるので以前にも試したことが有りますが、完全にテキストベースのコード編集ソフトであり、DWのようなCSSレンダリング機能(ブラウザと見た目が同じ編集画面)はありません。しかしよく考えたら、DWでも殆どコードビューで編集していて、表示の確認はブラウザでやっていました。という訳で、今のところAptanaでも不自由を感じていません。

画像制作/編集ソフト

以前はDWと同じ会社のFireworksというソフトを使っていました。これはPhotoshopほど高機能ではないものの、Web用のロゴやイラスト作成には必要十分なソフトで、慣れていることもあってとても使いやすかったです。

一方Linux環境画像編集といえば、やはりGimpが定番でしょう。Linux用というより、Windows版もMac版もある世界最大のフリー画像編集アプリという感じです。年を追うごとに高機能化しているようで、もはやFireworksなどよりずっと高機能で、Photoshopに迫る勢いではないでしょうか。

それ故に使いこなすには時間がかかりそうですが、まあボチボチやります^^; 因みに、GimpをWacomペンタブレットで使ってみましたが、問題なく動作しているようです。

DAW(音楽制作)

僕自身はMac時代のParformerやCubaseに始まり、Windows版のLogicそして最終的にはSamplitudeというマイナーなソフトにたどり着きました。ただその後、DAW界隈を全くフォローしていなかったので、今の状況については殆ど知りません。恐らく、年々高機能かつ高額化が進み、僕の手に負えない代物になってるのではないかと^^;

でLinux環境でのDAWですが、Ardourというソフトが定番かつ最も高機能のようです。後述のUbuntu Studioにも含まれていますし、Ubuntuのソフトウェアセンターからも無料でDLできます。しかし!これは最新バージョンではないのです。

オープンソースだがフリー(タダ)ではないという事らしく、最新のArdour3はパッケージをダウンロードするには最低$1!の寄付が必要です(ソースコードは公開している)。機能上は何が違うかというと、何と無料版のArdour2系はMIDIが扱えないのです!なので、UbuntuStudioには別途MIDIシーケンスソフトが同梱されています。

それはDAWとしてはあり得ないので、僕はセコく$1をPaypalで支払ってArdour3をDLしてみました(失敗してまた払わなければいけないかも知れないので)。インターフェイスはPro toolsにソックリらしいんですが、どのDAWも似たような感じなので特段違和感はありません。

DAW環境を新しくした時の宿命として、最初にセッティング方法を探し当てるのに時間はかかりましたが、一旦判れば付属のMIDIインストルメントも問題なくMIDIキーボードで演奏できました。その他、オーディオエフェクトを含めたプラグインの質としては、全般的にフリーのVSTiっぽい雰囲気ではありますが、これから色々と探していきます。

Ubuntu Studio

実は上述のクリエーター系のアプリ群と、ローレイテンシー仕様のカーネル(ソフトシンセを使う人には重要)がセットになったUbuntu Studioがディストリビューションとして配布されています。

なのでUbuntuでは無く、最初からUbuntu Studioをインストールしても構いません(デスクトップなどのルックスもStudio専用のものになる)。ただ、僕は先にノーマルのUbuntuを入れていたので、ローレイテンシーカーネルと必要なソフトだけ個別にカスタムインストールしています(それも可能)。

CADソフト

Windows版の有料CADソフトは最低何十万円、通常は何百万、ヘタする何千万円という世界で、個人はおろか企業でも中小は手が出なかったりします。

しかし、世の中には無料のCADソフトがあります。その名もFreeCAD(Linuxだけでなく、Windows版やMac版もある)。ツール群は上述の超高価ソフトに似てるらしく、取っ付きは悪くありません(少なくともJW CADのように「なんじゃこりゃ?」ではない)。

ただ、いくら調べてもバグとしか思えない挙動をすることが有りました(例えばあるモードで、線分が選択できないとか)。最初の説明を読むと「FreeCADは鋭意更新中なので、未だ業務用には使わないでください」みたいな事が書いてあったので、そういうことなのかなと^^;

一方、Windows時代から実際に使って居たのが、GoogleのSketchUP(及び物理シミュレーションプラグインであるSketchyphysics)です。SketchUPの操作方法は素晴らしく分り易く、Sketchyphysicsもやや苦労したけどほぼマスターしました。

ところが、上述のようにSketchUPにはLinux版が無かったのです。そこで、WINEというUbuntu上でWindows用ソフトを走らせるツールを使ってみました。WINEは仮想マシン的なものではないので、動作が激重なんて事はありません(逆にソフトによってはWindows版より軽快なこともあるらしい)。

実際、SketchUP自体は簡単にインストール出来、問題無く使えたのですが、Sketchyphysicsの挙動がおかしいのです。まず、初っ端からプラグインを読み込めないというエラーが出てきて、それはネットで調べたTipsで解決出来ました(ソースコードをイジる必要がある)。でも、別ウインドで出てくる、モーターなどのコントローラが真っ黒なまま、解決策が見つかっていません。

もしかしたらWINEではなく、新しいSketchUP 2013というバージョンと、従来のSketchyphysicsの相性問題かも知れません。ただ、WINE自身も必ずしもオリジナルのソフトの挙動を再現できる訳ではないようなので、今後も色々と問題に突き当たるかも知れません。

まとめ

思い返すと、この他にもインストール時のトラブルとか、オーディオエンジン周りのセッティングとか色々と苦労していますが、総じてUbuntuには満足しています。

大体、WindowsXPからWindows8に移行したとしても、僕のようにマニアックな使い方をしようとすれば、少なからず問題に直面したことでしょう。逆に、周辺言えば機器も用途も一般的な人は、Ubuntuの導入でそれほど苦労することはないと思います。WindowsパソコンにUbuntuを入れてデュアルブート環境にするのは簡単なので、自分の今のパソコンで試してみてはいかがでしょうか?

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